2025-05-29
宮部みゆきの、日本SF大賞受賞作。有名作品ですが、その昔、初めの方だけちょっと読んでそれきりになってしまった(主人公がうっすら卑屈で、展開がゆっくりだったのが合わなかったのか)のを、時空を超えて再挑戦。
複雑な様相の二・二六事件、そんな時代にタイムスリップして、美人女中に好意を持ち、さらに元軍人のお屋敷内でも事件が発生する。何故に。それを問う謎解き。
どこか自己否定的なのは主人公だけでなく、蒲生邸の兄妹も裕福な家庭に生まれていながら自分の価値に自信が持てない。
そして、時間旅行の能力者もまた、時代の流れを知りながら変えられぬ無力感を抱いている。
アニメ映画の「時を駆ける少女」は自分のささやかで個人的な都合のためにどんどん時間遡りを行っていましたが、宮部みゆきは、そういう超常的力をあまり肯定的には捕らえない。
地に足着けて、目の前にある「今」に立ち向かう姿にこそ人間の価値を認めています。
セ記事を書く
セコメントをする