「海難1890」
2016-01-24


困っている人苦しい思いをしている人に対して、手を差し伸べるのが人の道。
一言で簡単に言ってのけられるほどテーマは単純で、ストーリーもけっこう宣伝されているので意外な展開なんてものは無い。
だから話の筋以外の要素でどれだけ観客をひっぱってこられるか、が(私的には)重要だったのですが。
タイトルにもあるトルコ船の難破シーンに力が入っていたのが良かったです。この怒涛のシーンがあったからこそ、その前、使命を果たしてようやく故国へ帰れる皆さんが家族への土産物を大切に見つめるシーンが生きてきますし、事故の悲惨な結果と和歌山の皆さんの献身的な救助活動も説得力が出てきたと思います。
時代が変わって、空爆予告されたテヘランの混乱した様子も、ドキュメント映画みたいで緊迫感がありました。そんな中で、日本人に飛行機を譲るトルコの皆さん……なんて良い人たちなのだろうって、素直に思いますよ。イスラム教徒の、持たない人たちに分け与える精神って貴いなあ。どこまでが映画的演出なのか分かりませんが、これは時代が新しい分その時の現場証人もまだまだ居る話なので、極端な改変はないかと思います。
ヒューマニズム映画らしい「感動の演出」が鼻についたら嫌だなあ、と思っていたのですが、そういうのが無いわけじゃないけど、それ以上に全体的に細かい部分を丁寧に積み重ねてあって、いい映画だったと思います。
ただ、最後。
しみじみしたエンディングテーマが流れ終わり、いきなり画面に現れた現職のトルコ大同僚!あまりにびっくりしたのでどんなメッセージだったんか全然頭に入らなかったのですが、この人は今はシリアに空爆したりクルド人ともめたりロシア人ともめたり国内のテロ対策でテンヤワンヤなハズ。
美しいヒューマニズム映画を見ていたのに、いきなり生臭くなったというか政治臭くなったというか。日本上映版でトルコ大統領が出てきたというコトは、トルコ上映版では日本の総理大臣のメッセージもあったんだろうか・・・なんて考えちゃうと、映画の余韻も何もあったもんじゃないです。
[映画]
[映画タイトルカ行]

コメント(全0件)
コメントをする


記事を書く
powered by ASAHIネット