「くらのかみ」
2013-10-08


小野不由美熱再来です。十二国記とか何度も読み返して話の筋は全部頭に入っているのですが、それでも、ひとたびページに目を落とすと、本を置き難くなってしまいます。「華胥の幽夢」と「黄昏の岸 暁の天」を読み返して、戴国の騒乱と柳国の異変は病根が同じものなんだろうなあ、とか思いながら、もう十年以上出ていない新刊を待ちわびます。

 2003年発行の、対象年齢低めの謎解き小説。
 超自然的怪異と、人の手による事件との複合って意味で、「東亰異聞」「ゴーストハント」と同系統ですが、こちらはオカルトよりミステリ要素の方がうんと強いです。
 ド田舎の旧家にまつわる、二つの伝承。
 くらのかみと呼ばれる座敷童的存在が、家に富をもたらす。
 先祖が殺した行者の祟りによって、家では子供が育たない。
 そんなわけで、お金持ちだけど後継者のない家に、後継ぎ候補の親類縁者が集められ、話し合いが行われることになったのですが、そのさなか、食事に毒草が混入されるという事件が起こる。
 大人たちが「事故」と決めつける中、不審に思った子供たち6人(1人は座敷童)が調査を開始します。
 これが、けっこう登場人物も多いし展開も複雑で、エラリー・クインばりに論理的なんですが(妖怪の存在を除いて)、結構ややこしかったです。
 そして、ちょっと説教臭くて萌えがない。
 子供向けなんですべての漢字にルビがあるし表現もやわらかいのですが。
 怪談のドロドロや人間心理のドロドロや犯人探しのロジックや、小野不由美風味が盛りだくさんなんですが、この文字数では物足りない感じがしました。

 早く新刊出してほしいのは山々ですが、時間がかかってでも、大長編になろうとも、濃密な小説を書いて欲しです。
[読書]
[小野不由美]

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