「ダウト」
2010-10-29


昨年の春に観た映画。
 もともと舞台作品として高い評価を得ていた(トニー賞、ピュリッツァー賞受賞)ので、脚本は折り紙つき。役者も熱演。なのに、どうも映画としての高揚感が得られないのはなぜでしょうか。舞台と映画の、演出方法の違いか。
 カトリック学校の校長は、厳格で生徒たちから恐れられるシスター(メリル・ストリープ)。一方神父は、気さくで皆から慕われている(フィリップ・シーモア・ホフマン)。この神父が、男子生徒と関係を持ったという疑惑が生じ・・・・
 この話の肝は、「疑わない方が楽」ということですね。疑惑だけで確たる証拠は無いのですから、真実を追究したりせず、何も無かったことにしてやりすごせば心穏やかでいられるのです。
 シスターはものすごく保守的で頭カチカチで全然好きになれませんが、目の不自由な老シスターをさりげなく気遣う場面もあって、決して無闇に意地悪な人ではありません。しかし、徹底的に性悪説に基づいて人間を見ています。作中では語られませんが、さぞかし、人間の卑小な面をたくさん見てきたのでしょう。
 だから疑惑をそのままにせず、間違いを正すことを己の使命とし、波風を立ててでも追求する。たとえ「神から遠ざかる」ことになってでも。
 正しいことって何でしょう。正誤の二者択一に考えるから難しいような気もしますが。
 疑わざるを得ない苦しみと、信じようとする妥協がぐるぐると画面に渦巻く。
[映画]
[映画タイトルタ行]

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