「風林火山」
2021-12-11


久しぶりに再読、ですが、これってこんなに長いお話しだったっけ?印象的な部分だけ記憶に残っていて、細かい辺りはけっこう忘れていたようです。
基本的に、この物語はギャップ萌えの世界だと感じています。主人公の山本勘助は軍師として戦略戦術は怜悧冷徹、非情ですらある。それが若い可愛いお姫様が相手となると、くるくるおろおろ振り回されているのが面白い。
そんな彼の「夢」である由布姫もまた、二律背反を生きた人。「父を討った人の囲い者になりたくて、はるばるやって来るとは、国は滅びたくないもの」……武田信玄(晴信)に対する執着と反感、愛憎の狭間でグラグラしながらも、己の運命を生きるのです。
物語の中では触れられませんが、そんな彼女の産んだ男児が、のちに徳川家康に大負けし、武田家没落の象徴となるわけですから、人や国の興亡ってやつは、運命的です。
勘助のもう一つの「夢」である信玄については、天才と天然は紙一重っていうか、裏表って印象です。主人公じゃないのにどこかヒーロー感が漂う人物像。例えば不利な合戦の最中でも逆転勝ちを諦めない強気な姿勢とか。比べれば、勘助はやっぱり、歴史というドラマの主役に対する脇役キャラなのでしょう。
歴史の脇役と、負け戦。井上靖作品の2大キーワードです。
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