「春季限定いちごタルト事件」
2014-06-28


山本賞とりました、「満願」。直木賞候補にもなって。ラノベでいいモノを書ける作家は、大人向け小説でも評価されるものを出してきます。

 米澤穂信の「小市民シリーズ」。なんか、読んでてイライラしました、主人公二人が、性格悪くて。
 自分の性格に問題点があるのなら素直に「○○しすぎないように気をつけよう」でよさそうなものを、なぜか「小市民になろう」と決意するのが不可解で、「小市民」を強調すればするほどかえって小市民を小ばかにしているように感じるのですね。
 主人公のお友達(?)が似たようなことを指摘していて、この人はとても頼りがいのある好人物なのですが、でもいい人すぎて「こんな高校生いないよなー」って心のどこかで思ってしまいます。
 人物造形や話運びやタイトルのつけ方とか、全体的に机上の空論っぽいシリーズです。
 そんな小鳩君と小佐内さんが、小市民目指して高校デビューして、でも全然実態がそぐわないのが「春季限定いちごタルト事件」。
 そんな二人が一緒にいてやっぱり不協和音が起こってしまった「夏季限定トロピカルパフェ事件」。
 そんなふたりだからこそ一緒にいる意味はやっぱりあるんじゃないかとヨリをもどしちゃうのが「秋季限定栗きんとん事件」。上下巻の長編であるこれが、一番おもしろかったです。もう一人追加された主人公。瓜野くんが、主体的に動いているようで終始踊らされっぱなしだったのが良かったです。とんでもなくショボくて好感度の低い人物なのですが、でも「こういう人は、いそう」と思えて。
 順当にいけば「冬季限定○○事件」で小鳩君と小佐内さんは今度こそ叩き潰されて真に謙虚な人格に目覚めるか、あるいは観念して自分たちの性格と前向きに付き合っていくようになるかするはずです(予想)。
 でも、どうやったらこんな歪な人格が形成されるのか、彼らの中学時代のお話の方が、気になります。
[読書]
[作家別ヤ行]

コメント(全0件)
コメントをする


記事を書く
powered by ASAHIネット